Creative Commons 20周年! #20CCAnniversary

Fumi
13 min readFeb 2, 2023

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クリエイティブ・コモンズの現在地、シェアの未来

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)が世に出た2002年から20年がたったことを祝って、「クリエイティブ・コモンズの現在地、シェアの未来」というトークイベントが開催され、私も登壇してきました。(私はクリエイティブ・コモンズ・ジャパンのフェローをしています)

Happy 20th anniversary, Creative Commons!!

クリエイティブ・コモンズの現在地、シェアの未来

Photo by Yuko Noguchi

クリエイティブ・コモンズとの思い出

イベントレポートはCreative Commons Japan公式から出ると思うので、ここでは個人的な思い出話を。

私がCreative Commonsに関わり始めたのは2006年頃だったと思います。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスというのはそもそも「お上」が作った物ではないので、その頃はCCライセンスの普及を目指して、まずは知ってもらうとか、理解してもらうための活動を行っていました。YouTubeに採用されたり、Flickrに採用されたりするたびにみんなで大喜びしていました。

https://creativecommons.org/share-your-work/

懐かしい写真が色々発掘されました :)

2006年の New Context Conference で、Creative Commons を作った Larry、iCommons の Heather、Technorati の Tantek とパチリ。

今回のイベントでもご一緒した野口さんと Dominick と 2007 年にクロアチアのドブロブニクで開催した iSummit で撮った写真。

2007年12月の Creative Commons 5周年記念パーティで歌ってくれた、当時ブラジルの文化大臣だったジルベルト・ジル。いくつかの楽曲をCCライセンスで公開されていました。

2012 年 12 月の Creative Commons 10 周年記念パーティで Larry と。

2022年11月の New Context Conference で Larry、日経の小柳さん、NHK の倉又さんと。

年とったなぁ。。。と同時に携帯カメラの性能の向上が感じられますねw

Creative Commons の今

誕生から20年が経った今も、アート、カルチャー、教育、研究など、様々な領域で Creative Commons が使われ、また最新技術を使ったような新しいプロジェクトでも使われていることをとても嬉しく思います。。。!

今話題のテクノロジーといえば「AI」や「NFT」など色々ありますが、例えばAIでとても人気の Midjourney はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを採用し、無料で使っている方達はDiscordでpromptを入力し、結果の画像もシェアされるので誰でも見ることができるし、それを別の人がupgradeして高解像度版にしたりversion違いを作ったりすることもできます。素晴らしい!

NFTでは Blitmap や CryptoCrystals 、Nouns DAO など、たくさんのプロジェクトが CC0 を採用しています。

イベント開催報告:「NFTの使い方と創作活動の未来」

“Some Rights Reserved” の概念がなかったら、色々なシェアがとっても大変な世の中になっていたと、つくづく思います。

https://midjourney.com/showcase/recent/

Aaron Swartz 10周忌

実はこの1月11日は、Aaron Swartz の 10 周忌でもあります。

2002年12月に開催された Creative Commons のローンチイベントで CC ライセンスについて technical architect として説明したAaron Swartzはわずか16歳でした。その時の動画はこちら。

若かりしLarryとAaron。

CC BY Rich Gibson

Aaron はその後 Reddit の立ち上げに関わったり、SOPA/PIPA と戦ったりとたくさんの活動に関わるようになりました。

JSTOR が保有する論文データベースのダウンロードを巡って逮捕され、10年前の自殺に至ります。。

Aaron の生涯については下記 “The Internet’s Own Boy: The Story of Aaron Swartz” が制作され、Creative Commonsライセンスで公開されているので、まだ見たことがない方はぜひ御覧ください。

2020年にブログも書いてました。

The Internet’s Own Boy

You ought to be asking yourself all the time: “What is the most important thing I can be working on in the world right now?” And if you aren’t working on it why aren’t you?

今あなたがこの世の中でやるべきもっとも重要なことは何?もしそれに取り組んでいないならそれはなぜ?

Larry が政治腐敗の問題に取り組み始めたきっかけも Aaron でした。

Aaron「あなたが言う著作権やインターネットポリシーなど、多くの問題を解決するためには、根底にある政治腐敗の問題を解決しないといけないんじゃない?」

Larry「政治は僕の専門領域じゃないよ」

Aaron「アカデミックとしては専門領域じゃないかもしれないけど、市民としては?」

1月13日のNPR podcast: “‘You are powerful’: Remembering Aaron Swartz” でも、Aaronはもうこの世にはいないけれど、その思いを引き継いでいこうという話がされていました。

Have a vision of what the Internet can be. Be part of the debate. Build stuff. We ALL have that power.

インターネットがどんな物になりうるか、ビジョンを持とう。

議論に加わり、物を作ろう。我々みんながその力を持っているんだ。

Internet is great and horrible -both is true, and which one we take advantage is up to us, because they both will always be there.

インターネットは素晴らしい物でもひどい物でもありうるけど、どちらの道を選ぶかは私達次第なのだ。

Aaron はスーパーマンではないし、インターネットは Elon Musk や Mark Zuckerberg や Jeff Bezos の持ち物ではない。みんなで議論に加わり、みんなでインターネットの未来を作ろう。

どこかの誰かが魔法のように素晴らしいインターネットを作ってくれると放棄して、どこかの誰かが作った物に文句だけ言うのではなく、みんなでありうるべき、よりよいインターネットのビジョンを持ち、議論をし、手を動かして物を作るということが今もとても大事だと再認識させられました。

論争より実行を

こちらは Larry の CC 20 周年お祝いコメント動画。

Creative Commonsを2001年1月に作ったとき、どんな組織になるのか誰もわかってはいなかった。だから、18ヶ月かけてアーチストや科学者、学者や弁護士などに public domain を広げるためにできることを聞いて回った。当時は「著作権戦争」真っ只中で、 All Rights Reserved 勢はすべてのクリエイティブの利用について事前許可が必要だと訴え、No Rights Respected勢は著作権は泥棒で、インターネットから撲滅すべきと説いた。そんな中、CCは著作権はクリエイティブエコノミーにとっては重要な物であるが、アーチストが自分のクリエイティブ作品における自由な利用権について簡単に伝える術があるべきだという別の立場に立ち、クリエイター・科学者・学者など様々な人の作品に伴う自由のためのインフラを作り、2002年末にライセンス群をローンチした。CCは、たくさんの人がアイディアを出し、より良い物を作っていくという好例だったのではないだろうか。

先日、友人の Thunder が、Polygon で PM をしていると聞いて、色々質問してみました。Thunderは出会った時は Mozilla でエンジニアをしていて、その後 Creative Commons に参加した後 Tinker Kitchenを創業したり、Squareで働いたりした後、Polygonに転職したようです。

たくさんの人がブロックチェーンや web3 に可能性を感じているけれど、使ってみたらトランザクションは遅いし、エネルギー消費量は高いし、ガス代は高いし、ユーザビリティは悪いし、詐欺は多いし、問題も山積みなわけです。それに対してこういう問題があるからweb3はダメだ!と文句を言うだけの人も多いです。でも、Thunder は持ち前の problem solving 精神と技術力と経験を持って、ブロックチェーンのトランザクションスピードを上げてエネルギー消費量とガス代を減らすというインフラ部分をコツコツやっている。web3は未来だ!とかweb3は詐欺だ!とかの論争や、お金儲けに走る人もいっぱいいる中、そういうのに目もくれず未来のためにトンカントンカンとインフラを作り続けるエンジニア魂はかっこいいな。。

2008年に来日した時のThunder

2006年に「BlogTV」という Tokyo MX で放映されたテレビ番組を企画・制作・出演するという仕事をしていました。

当時はテレビ番組が YouTube に違法アップロードされるのをテレビ局がモグラ叩きのように削除依頼しまくるという戦いが起きている時代でしたが、BlogTVは、テレビ業界としては初めて、公式がテレビ番組をクリエイティブ・コモンズ・ライセンスでまるっと YouTube 等の動画共有サイトにアップするという取り組みをやりました。今ではネットでテレビが見られるのも当たり前になってきましたが、当時は珍しい取り組みでした。

普通の番組だとスポンサーがNGを出すところ、BlogTVはデジタルガレージの一社提供だったのでクリア、出演者がNGを出すところ、我々出演者はそういう前提で出演を決め、その前提で出てくださる方のみにゲストで出演してもらうということでクリア、制作会社がNGを出すところ、自力で制作していたのでクリア。

TOKYO MX、テレビ番組をYouTubeなど動画共有サービスで配信

多様なコミュニティの議論と協力

Creative Commonsは弁護士、技術者、クリエイターなど様々な人が関わるコミュニティです。というか、弁護士だけでも技術者だけでも作れないし、弁護士と技術者だけではニーズがわからないし、色々なバックグラウンドの人達が議論して、手を動かして、作ることが必須なプロジェクトでした。Creative Commonsをもっと普及させるために作られたのがiCommons、その年次イベントが iCommons Summitで、2008年には日本の札幌で iCommons や Creative Commons Japan、札幌市やデジタルガレージが協力して iCommons Summit 2008 Sapporo を開催しました。この時の準備がまた大変で、Creative Commonsの本部はアメリカ、Creative Commons側のiSummit担当者はドイツ、iCommonsの本部は南アフリカのヨハネスブルグ、札幌市は札幌で CC Japanとデジタルガレージは東京という時差バリバリ、当時の南アフリカは毎日のように停電で、「なんで進んでないの?」「だってだってだって停電が。。。」という状態。

これではあかんということでヨハネスブルグに世界中から関係者が全員集合してイベントプランニングのワークショップを開催することに。「ヨハネスブルグの空港に着いたら迎えを待て。決して自力で空港から出てはいけない」空港から宿へ向かう車が赤信号なのに止まらない。(減速はする)青くなってドライバーに聞くと、「ここでは赤信号でも止まると強盗に襲われる危険性があるので、気をつけて進むんだ」。Welcome dinnerの真っ最中に停電。レストラン側も慣れたもので、各テーブルに準備されたロウソクに火をつけていく。こんな大変な状態で仕事をしていたのだなと全員が腹落ちした瞬間でした。

当時は、Creative Commonsだけでなく、自由なインターネット・オープンなインターネットを求める色々なコミュニティが密接に関わり、そうしたコミュニティの中での人材の流動性も高かったと思います。Creative Commonsで働いていた人がMozillaに転職したり、Wikipediaコミュニティにいた人がCreative Commonsに参加したり。Open Knowledge Foundationとも議論したり。

みんなが手弁当でインターネットをよりよくするためのプロジェクトをあちこちで手伝っていたような気がします。私も本業としては Technorati Japan と Digital Garage と DG Incubation で働く傍ら Creative Commons を手伝っていたら、2007年に Wikimedia Foundation の Jimmy Wales が来日した時に、新プロジェクトを少し手伝ってよと頼まれたり。

CC20周年のために色々な古い写真をひっくり返しながら、あの頃若かったみんながインターネットを良くするためにわっしょいわっしょい頑張っていた頃を思い出しました。若くて何も知らないけど、色々なことを手伝うことでたくさん勉強させていただきました。そこで学んだことを何か今の社会に役立てらればなあと思います。

Larryも Creative Commons Summit 2021で、「著作権以外の問題でも “CC Way” の問題解決方法が何か貢献できないか」と語っています。何かできるといいですね!と改めて思った20周年でした。

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Written by Fumi

Currently explorer. Ex-Niantic, ex-Google, ex-NTT, ex-Interscope, ex-Technorati and ex-Digital Garage.

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