9月18日〜19日にオンラインで開催された「Code for Japan Summit」に参加し、「東日本大震災から10年、Hack For Japanとしての活動を振り返る」というパネルディスカッションに登壇させていただきました。
2日目の経済産業省商務情報政策局情報経済課長の須賀千鶴さんによる「GovtechとCivictech、両輪で進める官民連携の新しい姿とは」という基調講演が面白かったのでこちらもご紹介。
グラレコと動画はこちら。
2003年に経産省に入ったとき、小泉内閣で竹中さんが郵政民営化をしかけていた時期で、国がやるべきことと民間がやるべきこと、なぜ民営化すべきなのかを総ざらいしていた。国が独占的に提供すべきサービス、民間に任せるべき、もしくは官民がタッグを組むべきことを考えてきた。官民連携がライフワーク。
その後「クールジャパン戦略」を担当。「クールジャパンファンド」という官民ファンドを作り、「クールジャパン推進機構法」という法律を作り、「クールジャパン機構」という組織を作った。組織を作るときに口説いて来てもらった人もいたが、民間の人を官に連れてきて実力を発揮してもらうことの難しさ、お願いしてきていただいた官の責任などを痛感。また、自分で絵を描いて人を口説いて組織を作ったのに須賀さん自身はそこに出向しなかった。思いを込めて走り回った人が魂をこめるところまで責任をとらないとうまくいくものもいかないという学び。
官学連携では、「東京大学グローバルインテリジェンス寄付講座」をしかけ、2ヶ月で2億円を集めた。データサイエンティストの育成が必要だが、理系の人ばかり。本当に日本にとって必要なのは、経営者がもつ問題意識や世界観を理解した上で、経営課題を解決すべきデータを扱える二刀流のデータサイエンティストを育てること。講座は難しすぎて一年目に終了できた人がたった16人だったが、その後も続き、既に6000人の人材を輩出している。
経産省次官・若手プロジェクトの「不安な個人、立ちすくむ国家」に参加。経産省のホームページの深いところにひっそりと資料をアップしたら150万ダウンロード、経産省で見たこともないほどバズり、あちこちから声がかかった。世の中のステイクホルダーを分析していたつもりが、全く知らないステークホルダーがいることに気づいた。
直近は「世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター」を立ち上げた。今回は自分で準備して自分で出向。ブロックチェーンやAI、仮想通貨など、グローバルなデジタル時代に大事なアジェンダが出てくる中、何にプライオリティを置いて政策的な関心をもち、どんな政策介入をすべきかという難問に対して「誰か偉い人が言ったキーワードを拾う」という虫食いな政策になり始めていた。それに対して広い視野で色々な人と勉強して、どこに手を打つべきか議論できる場を作った。企業や官庁から沢山の人に出向してもらい、官民一緒にヘルスケア、モビリティ、スマートシティなど専門家が集まって何が重要なのかを議論していく場。役所にいるとピンとくるのに時間がかかるnext big thingsに気づき、役所に働きかけ、トッププライオリティに押し上げることができるようになった。
今はデジタル庁立ち上げを手伝っていて、デジタル庁からの依頼で「デジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)」を立ち上げた。このシステムとこのシステムはこう繋がるような物を作らないといけない。。。というアーキテクチャ設計をデジタル庁から依頼され、設計図を描いてデジタル庁に提出するという役目を担っている。官民から知見がある人に集まってもらっている。世界のベストプラクティスと繋がるような物を日本でもやっていく。
関さんとのQA:
Q: 民間の人が官に入った時に活躍しにくくなるのは?
A: 民の人が遠慮してポテンシャルを出し切れない。お作法がわからないので空気を読んで摩擦を増やさないようにしようとし、協力的な人ほど遠慮したまま3年ぐらいたってしまう。本当に能力のある人に決めさせてあげるのが大事。役所は「意思決定をみんなのものにする」ことで意思決定がぼやけていく。
Q: 役所の中で、情報が流れていない。
A: 出向前はオープンな人だと自分では思っていたが、出向してみたら実は保守的だったとわかった。今まで機密と思っていたことの9割は機密じゃなかった。情報を共有してフィードバックをもらった方が質もあがっていくのだと理解した。
Q: 役所でもっといろいろな人達の意見を知りたいという話をよく聞く。ステークホルダーを見きれてないという話もあったが、難しいのか?
A: 役所はステークホルダー分析が得意だと思っていて、何かがあるとすぐにステークホルダー分析をするように訓練されている。だが、日本ではソーシャルセクターがビジブルに育っていないので見逃していた。客観的にみているつもりだったが「都会のエリートのサラリーマンの視点から見た社会」しか見れていなかった。また、「役人というものが社会のステークホルダーとして認識して頂けていない」。みんなで話そう、というときに今まで霞が関の人たちは入っていなかった。
Q: 若手プロジェクトのメンバーは今も活躍?
A: 半分ぐらいは外に出てしまったw
Q: 民間側はどういう人が共創関係を築きやすい?
A: 当事者意識が大事。船橋さんは何か問題が起きたときに担当している人を責めず、「私何をしたらいいでしょう」という意識で社会問題にあたる。なので船橋さんが声をかけるとみんな一肌脱ごうという気持ちになる。コロナのときの関さんも東京都職員びっくりなレベルで圧倒的な当事者意識をもって走っていた。社会問題に対して役所に入る前は愚痴っていたが、役所に入るとあらゆる問題が「おかしいと思うならなぜ解決しにいかないの、リソースあげるし」と言われちゃう。
Q: それは経産省だから?
A: 経産省はリスクを取ることを多目に見る職場。デジタル庁に期待するのは霞が関文化とシビックテックの「オープンにして、一緒に解決して、公共財にあたるものを汗かける人が作る」という異文化の出会い。国家の意思決定はなんでもオープンにはできないが、ギリギリまでせめぎ合うことで、デジタル庁が最先端の組織になっていくのでは。
Q: 経済フォーラムのカルチャーづくりはどうやった?
A: プロジェクトを立ち上げるときはオーナーが伴走しないとだめだが、軌道に乗り始めたら引く。引かないと自分のリソースが回らないということもあるが、自分が描けるもの以上の物を見るには、はじめの何人かの人選はこだわるべきだが、信じてチームを作ったら完全に任せる。自分がいいと思った人だけを自分で口説いて60人集めてきた組織だったので、任せることに不安はなかった。
Q: これからの須賀さんは?
A: 経済安全保障。国家としてどうサイバー空間で生存していくか。サイバー空間でいろいろなイノベーションが起きている中で日本のポジションや生存領域をどう確保していくか。それが政策介入の理由になる。
Q: 部下のモチベーションの確認はだいじ?
A: モチベーションがあるものをやるとパワーが出る。役所は仕事を選べないし顧客を選べない。国民全員がお客さん。やりたくないこともいっぱいある。それは必要悪として手分けしてやるが、役所の仕事は面白いから人が来るので、楽しさは解き放ちたい。
Q: 役所の心理的安全性が低くて民間人材は活躍しづらい。どなられるときつい。締切が厳しい。仕様も削らないし、プレッシャーが厳しい。そしてその理由がわからない。
A: 不安な人の対応で時間が取られる。幹部が不安な時とか。不安というのは理由がないので自己処理してほしいが。。。
Q: 須賀さんの胆力がすごい
A: 役人は怖いものがない。身分保障がある。身分保障がある限りは辞めさせられない。心ある人はリスクをとって危険なこと、反対をされることをやらないといけない。そういう人に人事に介入されて飛ばせとか辞めさせろとかにならないために身分保障をもらっている。身分保障をもらっているからにはリスクを取らざるを得ない。
Q: 官民連携のきっかけがわからない人にアドバイスは?
A: デジタル時代の公共インフラが整っていないので、それを作るためにデジタル庁ができたタイミング。Code forの人たちは日本中で欲しがられる人材。国境なき医師団のように、手に職をもって、官民の国境を超えてスキルを活かして一肌脱ぐということを余暇でもいいのでやってもらえると官側も民側も日本中のアウトプットがあがっていく。みなさんのスキルに価値があるので、手をあげてリソースがあることを表明してほしい。
感想。私自身は、官僚の方とお話する機会があまりないので、なるほど官僚の方はそういう考え方なのかーと勉強になり、またきっとほとんどの官僚の方は須賀さんと同じ見え方・考え方ではないのかもしれないので、須賀さんがお話されているこの動画をたくさんの官僚の方に見て頂きたいなあと思いました。こういう方が日本をどんどんアップグレードしてくださるんだろうなと大変期待を持てる講演でした。ありがとうございました!