Democracy

Fumi
29 min readJan 19, 2021

--

この2週間はアメリカの民主主義を揺るがす大変な2週間でした。。。

・大統領選の投票結果が決まる議会を行っている連邦議会にトランプ大統領の支持者達が乱入し、5名が死亡という前代未聞の事件が発生。しかも現職大統領が煽った結果である。

・事件を受け、トランプ大統領の弾劾裁判が開始、下院は可決。今後上院でどうなるかが注目される。トランプ氏はアメリカ史上初、2回の弾劾訴追を受けた大統領となった。

この事件の結果、トランプ大統領はTwitter、Facebook、Instagramなどから永久アカウント停止。トランプ支持者たちが使っているSNSサイトParlerはGoogle Play/Apple App Storeからバンされてアプリストアでダウンロードできなくなり、更にはAmazon Web Serviceからも締め出されてサービス停止に。

議会は選挙結果を認定、1月20日(明日。。。)バイデン大統領の就任式を迎えることに。ワシントンDCおよびアメリカ各地の州都は厳戒態勢。50州すべてで武装抗議が予告されている。

Photo CC-BY-NC Blink O’fanaye

2020年の選挙戦

まずは2020年のクレイジーだったアメリカ大統領選挙を振り返る動画をどうぞ。文字で書いたら30ページぐらいになりそうなほどあれこれあって気が狂いそうになりますが、BBCが見事に3分にまとめてます。本当に見てるだけで疲れる一年(四年間)でした。。。。

史上最多の得票数

こんな選挙戦を終え、11月3日に選挙が行われました。結果、バイデン候補の得票数はオバマ元大統領を抜いて史上最多に。

公平で公正な選挙は民主主義の根幹です。

しかし7000万人を超えるアメリカ人がトランプ大統領に投票しているという事実もあります。

出典: https://www.washingtonpost.com/elections/

今回の選挙は本当に大変でした。Covid-19のせいで、投票所のスタッフが確保できない。今までは年配の方が多かったのですが、彼らは感染リスクが高いためスタッフの辞退が相次ぎ、スタッフが不足した。その結果、投票所の数がものすごく減らされた。その結果、投票するためには長蛇の列。Twitterでは「もう7時間待ってますがあきらめません」みたいな声も聞かれました。そこまで待っても、きちんと投票したいという人々の気持ちが民主主義を支えています。

民主党はコロナを避けて安全に郵便投票をするよう呼びかけるのに対し、トランプ大統領は郵便投票には不正が多いと攻撃。

選挙結果が出てからも、トランプ大統領は「選挙は盗まれた(Election was stolen)」として、選挙結果を認めない。。。ということで冒頭の議会への乱入が発生したわけです。

Electoral Collage

バイデン候補が8000万以上の得票で史上最多と書きましたが、アメリカの大統領選挙の結果は実はこの8000万の投票による直接選挙ではありません。間接選挙システムになっており、「Elector」と呼ばれる「選挙人」に託される「Electoral College」(選挙人団)というシステムになっています。選挙人の人数は、カリフォルニアのような人口の多い州は55人、アラスカのような人口の少ない州は3人。。。と50州それぞれ人口比によって決められており、州毎に得票数によってその州の選挙人の総取りになります。つまりカリフォルニアで過半数が民主党に入れた場合、55票すべてが民主党になる、というわけです。

このElectoral Collegeという制度はなかなかトリッキーで、勝つには選挙人の多い州できちんと勝つ、激戦州(swing state)で勝つ、などの戦略が必要です。(リベラルな人が多く民主党が強いといわれる州をblue state、保守な人が多く共和党が強い州をred stateと呼び、どちらが勝つかわからない州をswing stateと呼びます)

今回はバイデン候補がPopular vote(直接投票)とElectoral College(間接投票)の両方でトランプ大統領を上回りましたが、前回の選挙ではヒラリー・クリントン候補がPopular voteでは勝ったのにElectoral Collegeでは負けた結果、トランプ氏が大統領になりました。

なお、このアメリカの選挙制度の現状と歴史的経緯についてシリコンバレーの弁護士の友人がわかりやすくブログを書いておられたのでご紹介。

アメリカの大統領選挙、「過半数票」はどうしてたったの270票なの?(パート1) (パート2)

Electoral Collegeで、合計538票の過半数となる270票を勝ち取った候補者が大統領になるわけですが、今回は306のElectoral voteを勝ち取ったバイデン候補が勝者となりました。

11月3日が投票日で開票が始まり、郵便投票の結果の開票がすぐには終わらないのでじりじり開票され、選挙人の数が決まってバイデン候補の勝利となり、1月6日に議会で選挙人が集まって投票して選挙結果が認定され、1月20日に就任式が行われる、というのが大統領選挙の流れです。

1月6日になぜトランプ大統領の支持者達が議会に乱入したかというと、この「選挙結果が認定される日」だったからです。

連邦最高裁とRGBの死去

前述の通り、popular voteでもElectoral Collegeでも負けているトランプ大統領ですが、もう二ヶ月間も「選挙に不正があった」と言い張り続けています。ただ、こうなることもみんなわかってはいた。選挙の前に「もし負けたらあなたはその負けを認めますか?」という記者の質問に対してトランプ大統領は「負けは認めない、選挙詐欺を主張し最高裁まで裁判で争う」と言っていたからです。まだ選挙もしていなかったのに。弁護士/政治ジャーナリストで元ホワイトハウススタッフでもあるVan Jonesさんが「What if a US presidential candidate refuses to concede after an election?(アメリカの大統領候補が選挙後に政権移行を拒否したらどうするべきか)」というTED talkを公開するほど、選挙前から予想されていたことでした。

実は選挙結果に候補者が納得しないということは過去にもありました。2000年のジョージ・ブッシュ対アル・ゴアの選挙で、フロリダの結果が僅差で、機械による票の数え直しが行われ、さらに手作業による数え直しが行われ、裁判が行われ、連邦最高裁は5対4の票決で数え直しの執行停止を命じ、ブッシュ政権が誕生したのでした。

そこで大事になってくるのが連邦最高裁判事の布陣で、昨年9月までは保守派とリベラル派の構成が5対4でした。ところが9月に「アメリカでもっとも尊敬された女性」とも言われるリベラルのルース・ベイダー・ギンズバーグ判事(RGB)が亡くなって5対3となり、更にトランプ大統領が保守派のエイミー・コニー・バレット判事を指名。連邦最高裁は6対3で大幅に保守派に傾きました。連邦最高裁判事は終身制なので、人工妊娠中絶、死刑、宗教、移民、銃規制、環境問題など、今後のアメリカの様々な議題について、影響が出ると言われます。

ただ、今回の選挙結果については、そもそも「選挙に不正があった」という主張に根拠も証拠もまったくなく、米連邦選挙当局の調査委員会は、今回の大統領選は「アメリカ史上最も安全」な選挙だったとの調査結果を発表。個別の裁判でも、トランプ陣営は各地で色々な裁判を起こしてはいるものの、具体的な不正の申し立てや証拠を提示していないと訴えを棄却されており、米連邦最高裁は、ジョージア、ミシガン、ペンシルヴェニア、ウィスコンシンの4つの激戦州で不正があったとして選挙結果を覆そうとする訴えを退け、激戦州ペンシルヴェニアの郵送票を無効にするよう求める共和党関係者の訴えを退けました。今のところ、トランプ陣営が起こしている 50以上の裁判において、選挙結果に不正があったと認められた判決はゼロです。

1/26 update: Walstreet Journalによると、トランプ前大統領が選挙結果を無効にするため、連邦最高裁判所への提訴に踏み切るよう司法省に圧力をかけたものの、Bill Barr前司法長官、Jeffrey Adam Rosen司法長官代行達が「法的根拠がない」として反対し、断念せざるを得なくなった。そこでトランプ氏は、ローゼン氏を解任し、最高裁への提訴に同意する人を任命しようとしたが、司法省高官達が集団で辞任する意向を伝え、阻止したとのこと。

ゴネる大統領

ジョージア州では12月7日の時点で、3回目のバイデン氏勝利を発表しています。共和党が強い州ですが、バイデン候補が1万2000票弱の差で勝利したことに対し、トランプ陣営が疑義を唱え、2回目の再集計をした結果、やはりバイデン候補が勝利。しかし、この12月の時点で既にジョージア州の選管幹部は「このままでは人が死ぬ」 と警告していました。こちらの記事の動画にも入っていますが、トランプ陣営の弁護士がサイバーセキュリティ庁トップのクリス・クレブスを銃殺すべきだと発言。報告書を読もうとしたエンジニアに、「反逆罪で吊るすべき」という殺害予告と絞首刑の縄が送りつけられ、ラッフェンスパーガー州務長官は住所を公開され、家の前に車が乗り付けられ、敷地内に侵入され、奥さんは携帯電話に性的脅迫を受けているといいます。そしてトランプ大統領に対して「暴力の煽動はやめてください。そのうち人が怪我をし、撃たれてしまい、殺されてしまう」と。1月6日の議会乱入事件の一ヶ月前からこうした警鐘は鳴らされていました。

その一ヶ月後の1月3日。大統領選での敗北を認めていないトランプ大統領が上記ラッフェンスパーガー州務長官(共和党)に対し、選挙結果を覆すのに必要な1万1780票を「見つけ」て追加するよう要求し、それに対してラッフェンスパーガー氏が選挙結果に誤りはないので変えられないと答える、一時間にわたる電話音声が公開されました。

民主主義国家のアメリカで、現職のアメリカ大統領が選挙結果の改ざんを求める電話を聞くことになるとは。。。。

一時間全部聞きたいという方は下記から。

この電話でも根拠もなく選挙結果を改ざんしているのではないかと言及されている投票機械メーカーのDominion Voting Systems。Dominion社はトランプ陣営の代理人を務めたシドニー・パウエル弁護士を相手取り、13億円の名誉毀損の訴訟を起こしました。「バイデン候補に有利になるように票がすり替えられた」とか、「イランと中国がドミニオンの投票機に侵入した」等の陰謀論は、根拠のない主張であると。

そんなDominionのCEO、John PoulosさんにKara Swisherさんがポッドキャストでインタビュー。虚偽の情報や陰謀論が話されていることに対して、ひとつひとつ反論しています。ちなみにDominionにも殺害予告が届いているそうです。

Inside the Billion-Dollar War Against Right-Wing Conspiracists

議会乱入と大統領の責任

1月6日、トランプサポーターたちのラリーと、議会乱入の時系列はこちら。

Source: New York Times https://www.nytimes.com/interactive/2021/01/15/us/trump-capitol-riot-timeline.html

Critical Moments in the Capitol Siege

12:03 p.m. トランプサポーター達のラリーでトランプ大統領がスピーチ。「“After this, we’re going to walk down, and I’ll be there with you.”この後、議事堂まで歩いていこう。私も一緒に行く。」(実際はトランプ氏は議事堂には行かず、テレビで騒乱の様子を見ていた)「強さを見せろ。弱腰で国は取り返せない。」「選挙は盗まれた。君達は愛国者。」

12:53 p.m. 警察が護衛していた議事堂外部のバリケードを暴徒が突破。

1:03 p.m.議会では大統領選挙の結果の認定を行うためのセッション開始。

2:11 p.m.暴徒たちが議事堂の内部に侵入。議会はまだ議論を続けている。

2:24 p.m. トランプ大統領がペンス副大統領を Twitter で非難 (“Mike Pence didn’t have the courage to do what should have been done to protect our Country and our Constitution, giving States a chance to certify a corrected set of facts, not the fraudulent or inaccurate ones which they were asked to previously certify. USA demands the truth!”)

2:30 p.m. 上院議員達が避難開始、下院議員たちはまだ議場の中。

2:35 p.m. 暴徒が下院の議場に到着、議員たちはまだ議場の中。

2:39 p.m.下院議員達が避難開始。

3:05 p.m. 沈黙を続けるトランプ大統領に対し、バイデン次期大統領候補が声明。「トランプ大統領はテレビに出て声明を出すべき」

4:14 p.m. F.B.I. SWAT チームが活動開始

4:17 p.m. トランプ大統領が議事堂に乱入したサポーター達に向けて選挙は不正だ、君たちは特別だ、愛しているよとツイート。( “It was a landslide election. And everyone knows it. Especially the other side. But you have to go home. … There’s never been a time like this when such a thing happened when they could take it away from all of us. From me, from you, from our country. This was a fraudulent election. … Go home. We love you. You’re very special.”)

5:34 p.m. 議事堂の安全確保。議員たちはまだ避難中。

5:40 p.m. D.C.州兵が議事堂に到着。

6:00 p.m. ワシントンD.C. での夜間外出禁止令。

6:01 p.m. トランプ大統領、再度「選挙は盗まれた」とツイート。( “These are the things and events that happen when a sacred landslide election victory is so unceremoniously & viciously stripped away from great patriots who have been badly & unfairly treated for so long. Go home with love & in peace. Remember this day forever!”)

8:06 p.m. 上院議会が再開、下院は一時間後に再開。

11:41p.m. 上下両院合同会議。

3:40 a.m. 大統領選挙の結果の認定、バイデン氏の勝利が確定した。

1月6日の議事堂の様子を写真で見てみましょう。

下院の議場の窓を割って入ろうとした暴徒たちに向かって警備員が銃を向ける。

この時点でまだ議員たちは議場におり、伏せたり、動画を撮影したり、命の終わりを覚悟して家族に電話をかけたり。

バイデン氏の就任式用のステージをトランプサポーターたちが占拠。

議事堂を南部の旗をもって歩いていく暴徒。

議員たちのオフィスはぐちゃぐちゃ。

そうなんだろうなとは思っていましたが、ベン・サス上院議員はこの議事堂への乱入をテレビで見まもりながら、トランプ大統領が大喜びしていたと語っています。

Sasse says Trump was ‘delighted’ and ‘excited’ by reports of Capitol riot

どんな雰囲気だったのか知るよしもないと思っていたら、トランプ陣営の状況分析室からトランプ氏の息子がライブストリーミングしてました。ノリノリです。。。

1月6日のファクトチェック(Fact check: A sample of the false claims Trump, Republicans told on the day the Capitol was stormed)。

どれだけ危険だったのか。

どんな人が乱入したのか

色々な人がいましたが、「大統領が来いって言ったから」という田舎から出てきたおばあちゃんからProud BoysやQAnonのような極右や陰謀論者まで。

休暇中の現役警察官や退役軍人もいました。今回の騒乱の死者の一人、アシュリー・バビットさんは空軍で14年勤務した退役軍人でした。ラリー・ブロック・ジュニアさんも1989年から2014年まで空軍でパイロットとして勤務していた退役軍人で、拘束用のジップタイ持参で議事堂にかけつけ、インタビューにこう答えています。「私はこの国が好きで、大統領が参加してくれというから重要だと思って参加した。”The president asked for his supporters to be there to attend, and I felt like it was important, because of how much I love this country, to actually be there,”」

ウエストバージニア州のダーリック・エヴァンス議員(共和党)がこの乱入に参加し、Facebookでその様子を「議会に入ったぞ!」と興奮しながら生配信。その後削除。立ち入り禁止区域にも入っていたこともあり、訴追されて辞任しています。

競泳選手でオリンピックの金メダルを二回もとっているクリート・ケラー氏も参加し、3つの罪に問われ、刑期は15年以上になる可能性があるという。

What we know about the people arrested after the Capitol riots

乱入前の動画から:「’death is the only remedy’あの議事堂の中で行われていることを直すには、殺すしかない」という人も。

大統領弾劾

このような民主主義をゆるがす騒乱を招いた責任を問われ、トランプ大統領の弾劾が始まっています。

実は1月6日の時点では、オプションは3つありました。1. トランプ大統領が自ら辞任。2. 合衆国憲法修正25条発動による罷免。3. 弾劾。

当初は民主党のペロシ下院議長とシューマー上院院内総務は、「トランプ氏が政府への反乱を扇動し、非常に危険であり、即刻免職されるべき」「核のボタンはまだトランプ氏が持っていて危険」として、ペンス副大統領や閣僚に対し、トランプ氏の即時罷免に向けて米国憲法修正25条を発動するよう求めました。副大統領と閣僚の過半数が修正25条を発動させると、「大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができない」として、大統領の執行不能を宣言することができます。しかし、ペンス副大統領は応じない。

そこで、弾劾訴追の手続きが始められ232 対197で下院を通りました。ただ、上院が決議できるのは就任式の後になります。

就任式の後はもう大統領ではないので、弾劾しても意味がないのではと思いがちですが、この弾劾訴追の結果、上院が出席議員の3分の2の多数で罷免を決議した場合、トランプ氏は退職後の大統領としての年金(年額20万ドルあまりを一生もらえる)を失います。また、上院が罷免を決議した後、出席議員の過半数による追加の決議があった場合、2024年以降の大統領選への出馬を阻むことができる可能性がでてきます。トランプ氏は既に「選挙結果を覆すことができなかった場合は2024年に出馬する」と言明しているので、これを止めるという効果を作れる可能性があります。

議会乱入の後に行われた世論調査では、トランプ大統領の解任を支持する人が増えています。ABCニュースとイプソスが10日に発表した世論調査では、56%がトランプ大統領の解任を支持すると答え、支持しないの43%を上回りました。事件が起きた6日以降に実施された各社の世論調査の平均では、米国民の50%がトランプ大統領の弾劾または憲法修正25条の発動による罷免を望むと回答。なお、トランプ大統領は2019年9月にも弾劾を受けていますが、当時の世論調査では弾劾を支持する米国民は約40%にとどまっていました。

Mike Pence

今回大変気の毒なのがペンス副大統領。この4年で閣僚たちが次々に辞任したりトランプ氏にクビにされたりしている中、最後まで副大統領として支えてきた人です。ところが選挙で負け、裁判でも負け、どうしようもなくなったトランプ大統領が「ペンス副大統領がバイデン候補の当選をひっくり返せばいいのではないか。ペンス副大統領、やれ。」とまた嘘で煽ります。

実際は、副大統領にはそんな権限はありません

ところが、「やらないなら反逆者だ」ということで、Twitterでは“Hang Mike Pence”(マイク・ペンスの首を吊れ)がバズり、 Twitter社がそれを止めました。議会乱入の際は、暴徒たちが“Hang Mike Pence”と叫びながら押し寄せてきました。

ペンス副大統領は家族ともども逃げおおせたものの、暴徒が議会に入る1分前のギリギリ、しかも隠れ場所の30メートルぐらいのところまで迫っていたとのこと。しかも、逃げられたのは警官の一人が暴徒を抑えて時間を稼ぐことに成功したから。本当に紙一重でした。。。

Proud BoysQAnonもペンス氏を殺すつもりだったといいます。

議事堂敷地内には処刑台の模型が置かれ、南北戦争後に横行した黒人リンチで使われた首つり縄がかけられていました。

議会乱入事件の後、トランプ氏不在の中、国民に向けて声明を出したのはペンス氏。

トランプ氏は事件発生後に議会の州兵派遣依頼に応じようとせず、暴動を鎮圧するために派遣を承認したのはペンス氏

議会乱入後、議会を再開させ、バイデン氏が選挙に勝利したと宣言したのもペンス氏

トランプ氏が選挙の結果を認めない中、新副大統領のKamala Harris氏にお祝いの電話をかけ、政権移行に向けてお手伝いすると伝えたのもペンス氏

トランプ氏は「就任式には出席しない」と言う中、ペンス副大統領は「私は出席します」「円滑な政権移行を行い、安全な就任式を行います」、と。

SNSと言論の自由

Twitter社は今までもトランプ大統領が嘘の情報をツイートした場合にラベリングをするなどの措置を行ってきたが、6日に投稿された議事堂を襲撃した暴徒を「大好きだ」「愛国者だ」と呼ぶようなツイートを受け、アカウントを12時間にわたり一時凍結し、規約違反を繰り返した場合は永久に禁止すると警告。一時凍結が解除されると、トランプ氏は再び「自分に投票した人がアメリカの愛国者」などとツイートし、政権移行を進めるつもりがないことをほのめかす。

更には「自分は1月20日の就任式に行かない」とツイート。Twitter社はこれを「選挙は正当ではなかったと改めて確認するものだと支持者達が受け止めて」おり、「自分が出席しない就任式は攻撃標的として安全だ」と、暴力を企てる勢力への応援となるかもしれないとし、暴力賛美を禁止する規約違反として約8870万人のフォロワーがいたトランプ大統領のTwitter アカウント(@realDonaldTrump)を無期限停止にしました。トランプ氏はその後も大統領としてのアカウント(@POTUS)からツイートを試みたものの、これらの投稿も直後に表示されなくなりました。また、選対のアカウント ( @teamtrump )や選対担当者 ( @garycoby )などからも投稿を試みるも、これらのアカウントも凍結されました。

FacebookおよびInstagramは米議会で乱入を称賛する動画がポリシー違反であるとして、トランプ氏のアカウントを24時間停止し、そののち「トランプ氏が当社のサービスを使い続けるリスクは非常に大きい」「民主的に選出された政府に対する暴力的な反乱を扇動するために、われわれのプラットフォームが使われている」としてアカウントを無期限停止

更にはSnapchat、YouTube、Twitchなど、さまざまなサービスがアカウントを無期限停止にし、RedditとDiscordはr/DonaldTrumpを使えなくし、TikTokは議会乱入の動画などを流通しにくくしました。

トランプ氏の支持者達の多くが使っていたSNS「Parler」は、「言論の自由を尊重する」としてモデレーションがほとんどおこなわれず、過激な発言や陰謀論でTwitterのアカウントを停止された人々が流れ込んできていたサービス。大統領選本番の頃、11月3日から8日までに100万回近くダウンロードされてGoogle Playストアのランキング1位に上り詰めたこともあります。議事堂での暴動が起きたり、TwitterやFacebookで暴力を扇動したアカウントが大量に削除されたことから、議事堂の再襲撃やペンス副大統領を害することを煽る発言など、さらに過激化が進むことに。Parlerは議事堂乱入のオーガナイズの一部にも使われていました。GoogleとAppleは24時間の猶予つきでモデレーションを改善するよう要求したもののParlerが応じなかったため、両社はアプリをそれぞれのアプリストアから削除。Parlerが使っているクラウドサービスAmazonのAWSもサーバ停止を宣告し、アプリはアクセス不能となりました。

サービスが停止になる直前に、一人のハッカーがParlerのデータを死ぬほどクローリングして、アーカイブを残しました。このデータを使って、投稿のGPSデータから乱入者達がどこにいたのかマッピングをおこなったり、膨大な動画をマッピングに結びつけたり、色々な人が色々な分析を行い、この議会乱入事件で何が起きたのかを理解しようという試みが行われています。(もちろん捜査にも役立っています)

Mapping the videos of the Capitol building attackでは、左側のマップでのピンをクリックすると、そこで行われていたことが右の動画でわかるという形になっています。

時間軸で、いつどこにどれくらいParlerユーザがいて投稿していたかのマップ。ズームインして議事堂の状況が見れたり、ズームアウトして全米の状況が見れたりします。

議事堂乱入当日、Kara SwisherさんがポッドキャストでCEOのJohn Matzeにインタビュー。仕事が速い。

If You Were on Parler, You Saw the Mob Coming

その他のSNSサイトは様々な暴力的な投稿などを削除しまくっていますが、それこそが歴史と証拠なのだとして収集に取り組む人々も。

米議事堂に乱入した暴徒の「証拠」を保全せよ:SNSに投稿された動画データの”収集”に取り組む市民ジャーナリストたち

トランプ大統領のTwitterアカウントは削除されたのでどんなことをツイートしていたのかは見れなくなりましたが、New York Timesがやってくれました。2015年から2021年にトランプ大統領が行ったツイートが誰に、何にどれだけひどいことをツイートしていたかをまとめたサイトを公開しました。なかなかすごいので、ぜひご覧あれ。

The Complete List of Trump’s Twitter Insults (2015–2021)

FBIは市民たちに証拠の協力を求めており、たくさんの証拠が集まっているという。議会乱入という事態にも限らずセルフィーを撮ってそれをSNSに投稿する人も多く、セルフィー写真だけで140,000枚以上が集まっているとのこと。

今回は5人も人が死亡しており、国を揺るがす事件も起きているということで、トランプ大統領のアカウント削除は必然だったといえるでしょう。ただ、憲法修正第一条で保証されている言論の自由とのバランスや、「サイト運営者は問題のあるコンテンツが投稿されても、責任を負う必要がない」とする通信品位法230条との整合性、そもそもAmazonのような私企業がParlerの例のようなサービスの停止まで左右する力をもっていいのか。ではその力は国が持つべきなのか、その場合は他国の独裁者が危険な発言を行ったら停止するのか、それは内政干渉なのか。国でなければ第三者機関なのか。これをきっかけに、さまざまな議論が沸き起こっています。

資金源を断つ

トランプ氏はオンライン決済のStripeから追い出され、寄付金を受け取れなくなり、Shopify はトランプ氏の公式グッズの販売を停止、PayPalはトランプ支持者の一部グループのアカウントを停止しました。

ニューヨーク市のデブラシオ市長は、連邦議会議事堂乱入事件でトランプ大統領が支持者を扇動したのが犯罪行為であるとして、ニューヨーク市は今後トランプ大統領の一族が経営するトランプ・オーガニゼーションとの契約を解約する計画と表明。ドイツ銀行やシグネチャー・バンクもトランプ氏と取引を打ち切りました。全米プロゴルフ協会は、2022年のメジャー「全米プロゴルフ選手権」はトランプナショナルGCで開催を予定していたが、事件を受けて会場変更を決定

トランプ大統領だけではなく、選挙結果を認めないという投票をした147の共和党員についても、Comcast, AT&T, Verizonなどのキャリアのほか、Amazon, Best Buy, Airbnb, Cisco, Intel, Goldman Sachs Group, Mastercard, Nike, Walmart, Walt Disneyなど、ここに書ききれないほど非常に多くの企業が政治献金を停止しました

共和党員

議会乱入前、選挙結果を事実上認めないよう連邦最高裁判所に訴えた裁判について、100人を超える共和党の議員が選挙結果を認めないと支持を表明するなど、共和党員達の多くは大統領に賛同する姿勢を示しました。

その更に前、2019年のウクライナ疑惑に関するトランプ大統領の一回目の弾劾裁判では、共和党は「トランプ擁護」で一枚岩となり、否決されています。

ただ、この議事堂への乱入事件を見て、自らの命を危険にさらされることで、トランプ大統領の二回目の弾劾に関しては共和党員の動きに変化が見られるのではないかとみられています。トランプ氏を支持して弾劾否決に投票して本当に良心が傷まないのか。しかし、弾劾可決に投票してしまうとトランプサポーターからの票田を期待できず選挙に負けるかもしれないし、トランプサポーターから殺害予告が送られてくるかもしれない。投票結果は公開であり、弾劾のときは欠席できません。

US Capitol breach prompts host of GOP lawmakers to decide against challenging Biden’s win

なお、トランプ大統領に対する下院での弾劾決議はもう終了していますが、トランプ氏が決議を支持した共和党議員の身元の情報を要求していたことが判明。。。

日本も

アメリカは大変だなあと他人ごとだと思ったら大間違いで、日本でもトランプ支持者によるデモが行われていたらしい。しかも結構な人数で。。。

ジャーナリストの江川紹子さんは、「選挙不正を言い募るトランプ支持の「カルト性」に警戒を」という記事で、『オウム真理教教祖麻原彰晃が選挙に出馬したが惨敗した際、開票作業の「不正」を主張し、「票のすり替えがあった」と述べ、「国家権力」さらには「フリーメーソン」の陰謀と言い出し、信者達はこれを受け入れた』という。たしかに今回のトランプ大統領の言動に似ている。『警戒しなければならないのは、カルト的な思考・発想に人々が慣らされ、無批判に流布していくことだ。今回の米大統領選のことに限らない。』『今は誰もが発信することができる時代だ。気軽に陰謀論を拡散している人には、それがウイルスをばらまくのに等しい行為だという自覚を持ってほしい。カルト的思考・発想が流布するのを甘く見てはいけない。』

アメリカには陰謀論をとなえる「Qアノン」がいるが、日本にもなんと「Jアノン」がいるらしい。知らなかった。。。

なお、先週は日本のアメリカ大使館に爆破予告が送られたりもしています。

これから

1月20日にはバイデン大統領の就任式が予定されています。ワシントンDCの市長は「就任式は家から楽しみ、DCには来ないでほしい」と語ります。

AirbnbはワシントンDCでの既存の予約をすべてキャンセルし、就任式の期間中は予約できなくしました。

ワシントンDCは厳戒態勢で、アフガニスタン・イラク・シリアに配備されている合計人数以上の軍隊が警護にあたっています。ただ、DCだけではなく、50州の州都全てで武装した抗議活動計画の恐れがあるとFBIが警告しています。「オレゴンの共和党議員が極右暴徒のために州の議事堂のドアを開けた」という記事も出ていますが、動画を見るとドアをちゃんと閉めずに出て、そこにつけこまれたというだけのようですが、危機感が薄すぎて怖いですね。

アメリカでのCovid-19の感染者数は2400万人、死者数は40万人を超えました。アメリカの失業者はほぼ100万人に。人種差別や環境問題など、新政権の前には課題が山積みです。

最後に、シュワルツェネッガー知事からの動画をひとつ。

--

--

Fumi
Fumi

Written by Fumi

Currently explorer. Ex-Niantic, ex-Google, ex-NTT, ex-Interscope, ex-Technorati and ex-Digital Garage.

No responses yet