Threads

Fumi
Jul 7, 2023

--

昨日、Instagramチームが開発したSNS「Threads」がローンチされました。

テキストでつながる新しいアプリ、「Threads(スレッズ)」をローンチ

さっそく私もアカウントを作ってみました :)

https://www.threads.net/@siva001

Elon Muskが買収してからのTwitterがどんどん壊れ、ついに無料ユーザーは一日600ポストしか見れない(有料ユーザでも一日6000ポスト)という事態が発生。

早くから避難先が叫ばれていたものの、MastodonやNostrは一般人にはなかなか難しい。BlueskyはきれいなUIで初期の頃のTwitterのような楽しい賑わいを見せているが、招待制でユーザー数の伸びは限定的。

そんな中、Metaが出してきたのがInstagramチームが開発した「Threads」。開始後7時間で1000万人半日で3000万人とぶっちぎりのスピードでユーザー数を増やしています。これはある意味当たり前で、Instagramという成熟したSNSからユーザーもフォロワーも引っ張ってこれる。SNSというのは読んでもらってなんぼ、フォロワーがいてなんぼというところ、MastodonにせよBlueskyにせよイチから作り直さないといけなかった。ThreadsはInstagramベースにすることで、そのくびきから放たれて大きくスタートすることができた。これが1つ目のwin。

また、たくさんの人が来るということは、サーバ負荷が高いということ。Twitterは初期の頃これに対応できず「Fail Whale」と呼ばれるくじらのエラー画像が多発したことで有名で、最近もAPI有料化によりスクレイピングが増えたことやバグによりサーバの負荷が増えたことに耐えられず前述のような制限をかけざるを得ないようなトラブルが起きており、Blueskyも最近ユーザが増えたことで新規登録停止になっていた。ThreadsはInstagramのインフラを使えているため、こうした問題が少なくとも今のところは見受けられない。

なお、多分最近多くのソーシャル系サービス開発者が今後進むべき姿だと考えているのは、オープンな分散型SNS。いわば、Twitterがつぶれても、Facebookがつぶれても、Instagramがつぶれても、そのポストした内容やフォロワーはアメーバのように分散された他のSNSにもっていけるような世界。ユーザとしても、サービス提供社に自分の投稿やフォロワーのデータを人質に取られたくない、そんな意識が高まっています。逆に既存のサービス提供社側は、そんなことになると先行者利益を享受できなくなるし、そもそも安定して動いているサービスにそんな改修はかけられないので、分散型SNSは後発ばかりでした。そういうわけでTwitter、Facebook、Instagram等は中央集権型のSNSなのですが、実はThreadsはMastodonのようにActivityPubを採用しています。今はそうなっていないけれど、将来的にはThreadsのフォロワーをMastodonにもっていったり、MastodonのタイムラインをThreadsで読むことができるようになるかもしれません。世間は今、短期的にはThreadsにあの機能があるのないのでワイワイしてますが、長い将来的には、実は非中央集権型SNSであることがThreadsの最大の違いになってくるかもしれません。もちろんThreadsがコケてそうならない可能性もあって、我々はまだ数年待たないといけないかもしれませんが。

さて、昨日聞いたPodcast「Hard Fork」が面白かったので少しだけ紹介します。ゲストはまさにこのThreadの開発を指揮したInstagramのトップのAdam Mosseri。Threadsの開発に対する思いを話してくれていて、面白いです。興味を持った方はぜひ本編を聞いてみてください。

Special Episode: Meta’s Twitter Rival Arrives, with Adam Mosseri

Q: Threadsは非中央集権型なのが特徴的だよね。

A: 技術的にはActivityPub Protocolを使っているよ。これはMastadonのサーバとかアプリとかに使われているプロトコルで、色々なアプリやSNSが統合できるという意味を持つ。例えば、Threadsアプリから、Threadsを使っていないけどActivityPub対応した他のアプリやSNSを使っているユーザをフォローしたり。Threadsアプリから他のSNSのユーザをフォローしたり投稿を読んだりすることが、それらのアプリに行かずにできるようになったりする。業界はオープンなSNSの方向に動いており、Threadsはまったく新しいアプリだからこそ、そのオープンなSNSの世界に参入することができた。Instagramをそのように改修することはできないし、Threadsを開発することでこのオープンSNSの世界について多くを学ぶことができた。将来的にThreadsをやめるユーザがいても、フォロワーを連れていけるようにしたいし、クリエイターがどんなことを求めているのかを理解しながら開発していきたいと思っている。

Q: Instagramは中央集権的で、だからこそ管理しやすいしお金も儲かるし好きなように開発できる。なのに一体なぜThreadsは非中央集権にしたの?

A: 長期的にはメリットがあると考えている。今後、クリエイティブな人たちが集まるのは非中央集権SNSになっていくだろう。クリエイターはオーディエンスを増やしたいというインセンティブがあるが、他に大きなSNSがあったときに、Threadsにそちらのフォロワーを持ってこれるというメリットもある。give & takeだからね。好きなように開発できるかどうかに関しては、ActivityPubにはないThreads独自の機能をどんどん開発することができるしね。そこの部分については非中央集権のメリットはきかなくなるけど。

Q: Blueskyでは「非中央集権なんてどうでもよくて、Elon Muskが所有していなくてTwitterのようなことができるアプリが使えればそれでいい」という人が多いようだけど。

A: 短期的には関係ないかもしれないけど、長期的には意味があると思っている。非中央集権プロトコルに対応するのはかなり工数がかかって、ローンチに時間がかかってしまったけど、長期的にはそれが報われると思っている。Threadsをローンチしたら、短期的にはたくさんの人が参加して、そして去っていき、また新しいユーザを獲得しなければいけない。それがSNSってもんだからね。長期的に、数年後、どれだけたくさんの人に楽しんでもらえているかが重要なんだ。

Q: 収入は広告モデル?

A: 今は収入よりユーザが使い続けてくれることのほうが大事だね。新しいSNSを使ってもらうのは簡単だけど、使い続けてもらうことは難しい。もちろん広告があるから無料でサービスを世界中で多くの人に提供できるので広告は重要だけど、今はフォーカスではない。

Q: MetaにしてもInstagramにしても、最近はハードニュースや政治的論争に関わり合うことは避けて、エンタメとかに集中したがっているように見えたけど、Twitterは政治的議論の中心だった。なぜそちらにシフトすることにしたの?

A: してない!してない!してない!ハードニュース方向にシフトなんてしてないよ!何度もいうけど、してないからね!ニュースについて話すのを禁止はしてないし、色々な議論は起きるだろうけど、Instagramのユーザが強いエリアはスポーツや音楽、ファッション、美容、デザイン、アート等で、それらのコンテンツが強くなると考えている。Threadsをローンチしたら、フォトグラファー達が大喜びしてるんだ。彼らいわく、自分たちは写真を見せるためにSNSをやっているのではなく、ほかのフォトグラファーとつながり、語り合いたいと思っているんだ、と。Threadsはそういった用途にぴったりだからね。

Q: コンテンツモデレーションについては?

A: ThreadsのコミュニティガイドラインはInstagramの物を使っているよ。ユーザにとっては安全が保たれるし、新しいポリシーを作ったり運用をしたりといったことが一切なく始められたのはとてもよかった。ほかのサービスからThreadsにもってくるコンテンツについても同じポリシーが適用される。ActivityPub Protocolはそれぞれのサービスがそれぞれのポリシー、それぞれのガイドラインを持ち、それに基づいて運用されることを想定した設計になっている。よって、ほかのサービスで許容されて投稿されたものでも、Threadsのガイドラインに反している場合はThreadsでは表示しないことは可能だ。

Q: 文字数制限は?Twitterとの違いは?

A: 文字数制限は500。Twitterより全然シンプルでクリーンだよ。AndroidでもiOSでもサクサク動き、テキストでも写真でも動画でも投稿できる。Twitterがここ数年増やしてきた機能、たとえばSpacesとかCommunityとかは何もない。検索はユーザー名を検索できるのみ。投稿されたテキストの検索すらできない。

Q: Mastodonは真面目、Blueskyはおちゃらけててみんな楽しそう。Threadsは?

A: フレンドリーな場所にしたいと思ってる。「hidden words」とか「restrict」とかはInstagramにユニークで便利な機能で、もっと知ってもらいたいね。mentionとかreplyとかもあるし。今のところとてもフレンドリーな雰囲気になっている。

Q: FacebookやInstagramは他のサービスの真似をすることが多いよね。うまくいった例としてはInstagram ReelsとかStoriesとかね。うまくいかなかったのはNextdoorとかCameoとか出会い系とか。成功の確度やリスクについて、どう考えている?

A: クレジットは大事だと思っている。また、他の人達が学んだことをきちんと学んで自分のサービスに活かすということは大事だ。他社のクローンを作るのではなく、他の人達が作ったものから学ぶこと、なぜ成功したのかの理由、それらの学びが自分達に適用できるかという分析を行って、開発している。みんなが好むフォーマットがあると、色々なサービスがそのフォーマットを適用していく。ストーリーズにしてもフィードにしても、ユーザーが好むフォーマットが出てきて、PinterestにしてもTwitterにしてもYouTubeにしても、いろんなサービスがそのフォーマットに合わせていくようになるものなんだ。

Twitterのデザインで素晴らしかったのは「リプライ(返信)モデル」だと思っている。フォロー、テキストSNS、シンプルさ、文字数制限などのほかの特徴はほかのアプリでも実装されている。Instagramでもこの「リプライモデル」をなんとか入れようと思ったけどできなかった。Twitterの「リプライモデル」は、返信の投稿が元の投稿の付属でも二次的位置づけでもなく、元の投稿と同じ位置づけになっている。YouTubeやFacebookやInstagramなど、ほかのアプリでリプライやコメントをした場合、それらは元の投稿がメイン、リプライやコメントはその元投稿の付属になるだろう。「会話」が二次的な位置づけになってしまうんだ。Twitter、Mastodon、Bluesky等ではリプライの投稿がコンテンツ、会話がコンテンツとなっている。

リスクは個別のサービス毎というより全体のポートフォリオで測っている。うまくいきそうだけどアップサイドが少ないサービス、リスクはそこそこあるけどバリューもそこそこみたいなサービス、ムーンショットなサービスなど。ベータな物だらけでもリスクが高すぎてもまずいけど、簡単に作れて簡単に勝てるものだけやっていたらイノベーションに追いつけなくなる。Threadsはリスクは高いけど成功したら重要なプロジェクトだと思っているよ。

--

--

Fumi
Fumi

Written by Fumi

Currently explorer. Ex-Niantic, ex-Google, ex-NTT, ex-Interscope, ex-Technorati and ex-Digital Garage.

No responses yet